体験録!心揺さぶる滋賀<春> 一度は見やれ!伊庭の坂下し祭り
2025年5月4日(日・祝)、東近江市で行われた「伊庭の坂下し祭り(いばのさかくだしまつり)」に参加してきました。
山に登り、神に祈り、神輿(みこし)とともに険しい崖を下っていく・・・最初から最後まで心が震えるような1日を過ごしました。
伊庭の坂下し祭りってどんな祭?
滋賀県東近江市伊庭町にある繖山(きぬがさやま)の標高263mの地点にある繖峰三神社(さんぽうさんじんじゃ)から麓にある大鳥居まで、重さ約500キロの神輿(みこし)を氏子の若衆が引きずり降ろす神事。
県無形民俗文化財に指定され、地元では850年以上前から行われていると伝わります。
全長約500mにおよぶ坂道は断崖絶壁で、途中何箇所かの難所があり、手に汗握る危険と感動を合わせ持つ見せ場となります。
事前に準備したもの・服装と注意点
正直に言って、普通のお祭り気分で行くと痛い目に遭います(笑)。登山に近い感覚です。
準備しておいてよかったもの
・ 滑りにくい靴(スニーカーでも大丈夫ですが、靴底のチェックをしておいたほうがいいかも)
・ リュック(両手が使えるよう必須)
・ 軍手など手袋(ロープを握ったり、木に掴まったり、地面に手をつく場面も出てきます)
・ 飲み物(山登りの後、水分補給が大事)
・ タオル・羽織るもの(山登りで汗をかいた後の冷え対策。地上との気温差注意)
持ち物と注意点
・ スマホやお財布などの貴重品は首から下げるか落ちないように収納(落としたら二度と戻ってこないかも...)
・ トイレがない!神輿と同時に下りる場合、10時~16時頃までかかります。特に女性は事前にしっかり済ませておくように
・ 道中の落石に注意!ほとんどは小さい石ですが、結構な頻度で落ちてきます
・ 神輿の思わぬ動きや転落防止のため、警察や警備の方の指示に従うこと

大濱神社を通って繖山へ
大濱神社は伊庭郷の氏神。境内にある葦葺きの仁王堂は県指定文化財で、坂下しで用いられる五社の神輿が収められています。
祭の主役である氏子の若衆は参拝を終え、繖山へ向かいます。
登り:息を切らせて、聖なる山へ
朝10時30分頃、出発地点 望湖神社(ぼうこじんじゃ)の大鳥居へ。
取材の案内をしていただく警備の皆さんとともにいよいよ登山開始。見た目以上にきつい...!急勾配の岩場や、木の根が這う苔むした山道。新緑の木漏れ日と鳥のさえずりが美しいはずなのに、息は上がるばかり。
時には手を伸ばしてロープや木にしがみつき、汗だくで登っていきます。
一番の難所であり見せ場の「二本松」。
ほぼ直角にしか見えない!本当に、ここから神輿を下すのか!?と半信半疑で、さらに登っていきます。
まだまだ難所は続きます。「本堂抜け」に「屏風岩」。
歩くだけでも大変な山道が続きます。
山頂の神事:緊張と荘厳、空気が変わる
たどり着くと、空気が一気に変わります。木漏れ日の中、集うのは氏子と神職、祭りを支える大人たち。
神輿はまだ静かに鎮座していますが、若衆が待ちきれず前を陣取ったり、周囲で賑やかに談笑したり、これからの厳しさは感じられず楽しそうな雰囲気に包まれています。
神事が始まると厳かな雰囲気に。参加者全員が神聖な空気に飲み込まれるような感じ。
一転、神様を神輿に移す「神移し」と呼ばれる神事では盛り上がりを見せます。但し、これは撮影禁止なので注意!
ちまきが撒かれ、「伊庭の祭り歌」も始まり、若衆たちが神輿に取りつき、いよいよ"坂下し"が始まりました!
坂下し開始:断崖絶壁を下る
いきなり、ほぼ崖。神輿の綱を引き、押さえる若衆たちの目は真剣そのもの。私も一緒に踏み出しました。
①宮出し の後、②僧衣の岩 ③吹上岩 ④屏風岩 ⑤本堂抜け ⑥瓜溝 ⑦台懸岩 ⑧二本松 ⑨長番場 ⑩鳥居前 ⑪坂下 と難所が続きます。
よく飛び交う言葉「サル効かせ!」
「サル」とは、急斜面で神輿が急に走り出さないように速度を調整するサルなわのこと。
「サル」による緩急の使い方で、危険を回避したり歩みを進めたり、大きな大きなサポート役です。
神輿は時折大きく傾きます。その調整に「山方」「谷方」という言葉が飛び交います。
下から山を見て、右側を谷方、左側を山方となります。
警備の方から観客へ指示してくださる際にも使われることがありますので、覚えておくと便利です。

伊庭の坂下しには若衆になって初めての年を「初山(はつやま)」といいます。
初めて参加する15歳の「初山」は、難所で神輿の前に載せます。観客はハラハラしながら見守ります。
なんと!約60度の急斜面の岩場・・・最大の難所「二本松」に挑む!
ついにやってきた、坂下し祭り最大の難所「二本松」。約60度、高さ6mほどの急な崖で、毎年ハラハラの見せ場です。
祭りに参加した人すべてが「ここだけは絶対に気を抜けない」と口を揃える場所。伝説の難所に挑む瞬間、現場にいた私の心臓もバクバク鳴り響いていました。

しかし、若衆たちはここぞ見せ場とも言うべき意気揚々で、「伊庭の祭り歌」を大合唱!胸が熱くなり、思わず手拍子が出ます。
伊庭の祭を一度は見やれ 男肝つく 坂下し
あれを見やんせ あれ二本松 神輿おどらす谷の底
見守る観客も、息を呑むほど真剣。その瞬間、伝統の重みと、人々のチームワークを肌で感じました。
無事に二本松を通過した時には大きな拍手が!後ろを振り返ると、通ってきた断崖絶壁。人生でこんなスリル、なかなか味わえません。
大鳥居到着!全身で味わう達成感
時刻は夕方16時頃、ようやく大鳥居まで下りてきました。
膝はガクガクだけれど、無事に地面を踏みしめた瞬間の達成感は言葉にならないほどで、全身の力が抜けるのと同時に胸の奥が熱くなりました。
終わってみての一言
伊庭の坂下し祭りは、観るだけでも十分インパクトがあります。でも、実際に体を使い登って祈り、そして命がけで崖を下ることで、地域の想いや伝統の重みを何倍にも感じられました。
このドキドキと達成感は、一生忘れられそうにありません。
道中の出会いや励ましの声も心に残る、感動の一日。
春の滋賀で、ぜひ見やれ(観にいらしてください)!






