近江をめぐり、各地の伝承を綴った紀行文集。1972(昭和47)年8月より、「芸術新潮」に10回にわたって連載され、1974(昭和49)年2月に駸々堂出版より刊行されました。
巡って行くうちに、私はえたいのしれない魅力にとりつかれてしまった。それが何であるか、はっきりとはいえない。いえないから書いてみる気にもなったので、ともすれば私の足は近江へ向い、茫漠たる湖を望んで、人麿の歌を口ずさむこともあった。
「近江山河抄」~近江路~より

「近江山河抄」初版本
白洲正子さんは、西国三十三ヶ所を巡る取材によって「近江」に惹きつけられました。そして、近江が石を中心とした、一大石造文化圏であることに気づかされます。

山中に石仏がある狛坂磨崖仏
石や岩座といった古代からの自然信仰と、その岩座に宿る神の姿を観音菩薩として化現させるという日本独自の仏教の形態が形となって表され、外来の宗教である仏教を、広く民衆に行き渡らせようとする過程が理解できる場所が近江だと気づくのです。
「近江は日本文化の発祥の地」と言い切って、「近江山河抄」では、その魅力を充分に著しています。

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